もどる

NEW MEDIA6月号より


毎年春にロサンゼルスで開催される世界最大の障害者支援技術会議「テクノロジーと障害者」 (主催者であるカルフォルニア州立大学ノースリッジ校の頭文字から通称「CSUN」)。
16回を向かえた今回は、「連邦政府が調達するIT製品は障害者にも使えるものでなければならない」 とする米国リハビリテーション法508条の本格連用を6月末に控えた状況下、全米のみならず、海外 からも多くの人々が米国の動向を注視して集まった。

この分野で日本が取り残されているという危機感を募らせる、情報のユニバーサルデザイン研究者として 活躍する潟ーディットの関根千佳・代表取締役社長と今回初めて出展しての実感を持つ鞄本テレソフトの 金子秀明・代表取締役社長のお二人に、CSUNが持つ意味について語ってもらった。
会場の様子
セミナー会場では会場の外まで
あふれるほどの充実ぶり

特別対談
鞄本テレソフト 潟ーディット
金子秀明
鞄本テレソフト
代表取締役社長
関根千佳
潟ーディット
代表取締役社長
驚くほど世界の障害者支援市場は大きい
関根:私は今回で6回目ですが、CSUNは年々大きな会になっています。 障害者支援技術について、大きなホテルを二つ借り切って、約400社の展示と300本の発表という 規模には、本当に驚かされますね。
金子:私たちは今回、点字と墨字を同時に印刷できて、しかも音が静かという点字プリンターを出品しました。 アメリカにはない製品なんですけど、果たしてニーズがあるかどうか、それを確かめに行ったんです。 そうしたら、いろいろな人が見にきて評価してくれたんですが、アメリカ以外の国の業者や障害者団体の人も かなりいました。これには、驚きましたね。
関根:出展者を含め40ヵ国ぐらいから来ていたそうです。
 それと、盲導犬を連れた視覚障害者や電動車椅子の重度障害者があんなにいっぱい集まる展示会もまた、 他にありません。しかも、彼らは一般ユーザーだけではありません。IT企業のエンジニアだったり、障害を持つ 社員のために支援機器を調達する責任者だったり、自分で会社を起こした社長だったり。障害者がそうやって 活躍していることが、もう全然珍しくないんです。
 そんな中に、日本企業の出展が金子さんの所を含めて2社しかなかったというのは寂しいですね。
金子:私たちが出展した製品は、日本の市場だけでは売れる台数が限られていて価格を安くできない。 この壁を破るには市場を海外にまで求めるしかないと思ったからです。
関根:それは日本の障害者支援機器メーカーに共通した問題です。だから、他のメーカーももっとCSUNに行って、世界に 市場を広げることを考えて欲しい。
金子:私たちは今回の出展で、アメリカの会社だけではなく、イギリス、フランス、イタリアの会社からも「この点字プリンター を扱わせて欲しい」という申し入れを受けました。近い内に製品を持って商談に行くつもりです。
関根:それはすごい!


障害者支援技術について世界から
大きく遅れている日本
金子:大きな収穫はもう一つありました。それは、「ここにくれば障害者支援技術をめぐる世界の動きが分かる」 ということです。
関根:そうですね。それは点字を見てもそうなんですけれど、もう一つ大事なのは、研究発表です。 CSUNは、カルフォルニア州立大学ノースリッジ校の障害を持つ学生をサポートするセクションが 支援技術の研究を始めたことが、そもそもの起源と聞いています。だから、研究発表の充実ぶりもすごい。
 今年の目玉は、アメリカで”障害者支援技術の父”と呼ばれるグレッグ・バンダ―ハイデンの、 ブロードバンド時代のテレコミュニケーション像についての発表でした。「聴覚障害者は携帯電話で こういうサポートを受けられるようになる。視覚障害者は〜」と、いろいろな障害についてメモが取れないくらい数多く のサービス像を示していました。
 他にも、全米に十いくつあるRERC(リハビリテーション・エンジニアリング・リサーチ・センター)の研究員などに よるレベルの高い研究発表がたくさんありました。
金子:そして、来場者の間では、508条がらみの話が盛んに交わされていたということですね。
関根:そうなんです。508条自体は、1986年に制定されているんですけれど、それがいよいよ強制力を持つことに なった、連邦政府が今年6月21日以降に購入するすべてのIT機器が対象で、それらが障害者に使えなかった場合は、 不利益を受けた被雇用者や市民が提訴できるようになったんです。で、「どうなるんだ」と、海外からの来場者も含めて 、その話で持ちきりという場面がありましたね。
 508条が規制するのは連邦政府ですが、実質的には政府が助成金を出している学校その他すべての団体が 規制されます。その上、州政府でもすでに508条準拠の動きが始まっています。
 だから、カナダやイギリスなどは「これは大きな非関税障壁になるということで、国レベルでこのアメリカの動きに対応しよう としています。それに比べて、日本は政府も企業もやっと問題に気づいた程度です。CSUNの来場者の議論を聞いていて、「 日本はどうするの」って本当に心配になりました。
消費者センターの新所長Bud Rizer氏と、
キーノートスピーチを行った
John Hockenberry氏
Harry Murphy氏と関根千佳さん
カナダのエンジニアとして活躍するRodney氏
車椅子で元気に走る
サン・マイクロシステムズのEarl Johnson氏
腕がない彼女はモールス信号を使う入力システムを開発し展示。ユーザーの立場に甘んじるのではなく開発・提供者になるバイタリ
ティがスゴイ
会場には盲導犬だけでなく介助犬も 視線入力は数多く提案されてきた
視覚障害のサポート機器が充実
独自の理論でキーボード革命を提案するJames Barret氏 日本からの出展社の一つプレクスター社。音声読者システムの国際規格DAISYの端末の「PLEXTOR」を展示(手に持つのは次世代型)
点字と墨字の同時印刷できる点字プリンターを提案して世界の注目を集めた
日本テレソフトの金子社長


このページのトップにもどる