2008.06.26・読売新聞掲載

カラオケ歌詞点訳ソフト
10万曲対応「楽しんで」


 通信カラオケシステムに入っている曲を点字に訳すソフトを、視覚障害者支援機器メーカー「日本テレソフト」(千代田区麹町)が開発した。今や多くの人の娯楽となったカラオケだが、目の不自由な人には画面の歌詞が読めないことが壁になってきた。「一軒でも多くの店が取り入れてくれたら」と、障害者らも期待をかけている。(中村亜貴)

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 点字プリンターなど視覚障害者向けの商品を販売してきた同社は、カラオケをもっと楽しみたいという視覚障害者の声を聞く機会が多く、昨年から開発に取り組んできた。

 ソフトは、通信カラオケシステム「ジョイサウンド」を販売する「エクシング」(名古屋市)の協力を得て開発。曲に合わせて歌詞データを点訳しながら、キーボード上の点字ディスプレーのピン(突起)を動かす仕組みだ。ピンはメロディーよりワンテンポ早く動き、視覚障害者は指で触れながら曲に合わせて歌う。

 このソフトで、ジョイサウンドで扱う約10万曲が点訳できるようになったという。日本テレソフトの金子秀明社長(57)は「技術面では、曲よりも少し早く点字を表示できるようにすることが大変だった」と振り返る。

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 これまで視覚障害者はカラオケ店に行く場合、歌詞を事前に覚えなければならなかったり、点訳の歌詞カードを持ち込んだり、気楽にマイクを握ることは難しかった。生まれつき目の不自由な江東区の主婦、中山利恵子さん(40)は25日、同社近くの施設で、点字カラオケを試した。キーボードから手を放した瞬間、「これなら遅れずに歌える」とにっこり。「点訳の歌詞が置いてある店はないに等しい。これまでは一部しか詞が分からなかったりで、歌いたい曲がほとんど歌えなかった」と話した。

 この日は英国の王立盲人協会幹部も視察に訪れ、「子どもに親しみのある曲であれば、点字教育にも使える。ぜひ英国でも導入したい」と語った。

 エクシングでも約10年前、点訳の歌詞本をカラオケ店で視覚障害者に配ったことがあり、その時の反応から障害者向けサービスの需要は感じていたという。同社はこの秋から直営店などで試験運用することを検討しており、いずれは自社システムを使う全国の店に利用を呼びかけたいとしている。

(2008年6月26日 読売新聞)

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